風水について

 

私が初めて風水とゆう言葉を見聞きした時は「風水とは古代中国の地相占術であり龍脈を辿って龍穴(気の集まる場所)を求める術である」と認識しておりました。

それから何年もしないうちに巷では風水ブームが巻き起こり本屋に行けば風水の名を冠した書物が所狭しと並ぶようになりました。それらを手にとって見ると内容は従来の気学にも出てくる九星の色や事象の「おまじない的拡大解釈」と云っていいものでした。

全ての風水本がそうだといっている訳ではありませんが、とりわけ20~40代女性をターゲットにした風水関係の出版物の内容には「トイレカバーやスリッパの色を変えたら主婦はヘソクリが貯まって家庭も円満」といわんばかりの内容が満載されているものもあります。若年女性受けを意識した装丁の度合いと、この類の内容度は比例してるようです。最近ではスッカリ飽きられた感のあるこれら「色風水」に代わり「掃除風水」で売っている輩も多いようです。トイレ掃除や部屋の片付けを積極的に行う習慣が身に付いた方もあり「色風水」より世の中の役に立っているのかもしれません。

とはいえ既に「風水」と云えばこれらのカラー占い・インテリア占いを指すと信じている方が未だに多く存在しているようで一つのビジネスとして確立している感があります。当然ながら、これらの著作で風水鑑定の主要素であるべき「龍・穴・砂・水」といった巒頭(らんとう)部分には殆ど触れていません。

人それぞれの意見や考え方があるとは思いますが、ここでは私なりの定義を記しておきます。

①風水とは山の形や河や道路の通り方、建物の形状その他諸々、周囲の環境を観る事で吉祥の地に陽宅(住居)陰宅(墳墓)を定め福徳を得るのが主たる目的。時の為政者が都作りの指針にしたもの。堪輿(かんよ)。

②ハンカチやネクタイの色を変えただけで恋人が出来たり、カーペットやカーテンの色が違っただけで金運が上がったり下がったりするといった話は風水ではない。

と、なるのですが問題は日本を含めた現代先進国の住宅事情で①の見地からの住居選定及び転居はかなり厳しいハードルをクリアしなければなりません。元々広大な土地を前提にした古代中国の「地相を論じる風水」の理論をそっくりそのまま現代日本社会に適用するには無理があり、そんな絵に描いた餅の屋外の話より風水理論の内の「理気」と呼ばれる宅向や個人別の吉凶から宅相を鑑定する内容の方が受け入れられ易いのも至極当然といえます。

むしろ②の方法で前向きな気持ちに成れるなら、それを風水と呼ぶかどうかはともかくとして開運法としてはアリだと思います。

余談ですが「風水」の語源を紹介しておきます。晋の郭璞(かくはく)が著したとされている「葬書」にある

「気乗風則散 界水則止 古人聚之使不散 行之使有止 故謂之風水」

訳:気は風に乗れば則ち散り、水に界せられば則ち止る。古人はこれを聚めて散らせしめず、これを行かせて止るを有らしむ。故にこれを風水と謂う。

の一節が由来と云われています。